本記事の内容

本記事では、SCSKの同業他社と比較した強み、弱みを独自の視点で解説します。当サイトは、この分析を基に、選考を受けた全てのSIerで選考を通過しました。

本記事の視聴対象者は以下の方です。

  • SCSKに興味がある方。
  • SCSKの選考を受ける方。
  • SCSKの詳細な企業分析を行いたい方。
  • 他のSIerと差別化ができず困っている方。
  • SIer業界に興味がある方。

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SCSKとは

住友商事を親会社に持つ大手SIer

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  • SIer業界第11位の売上高。
  • 顧客のシステムを開発することが主な事業。
  • 競合と呼べそうなのは、伊藤忠テクノソリューションズ、TIS、BIPROGY。NTTデータ、富士通等はもちろん、NRIとも少し差がある印象。

住友商事GのITサービス中核企業

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  • 株式の50.6%を住友商事が所有している子会社。現会長と取締役1名は親会社の住友商事出身。#社長はSCSKの出身。
  • 住友商事の主要子会社にSCSK以外のITサービス企業はなく、IT分野におけるグループの中核企業。
  • 住友商事G向けのシステム開発も実施するが、外販の割合の方が遥かに高く「独立系SIer」と呼んでも問題はない。

売上高4459億円/利益11.5%/従業員数8470人

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  • 売上規模で見ると業界TOP10に迫る大手SIer。合併後の2012年から成長を続けている。
  • 利益率は大手の中でも3本の指に入る。16%のNRI、12%のTISに次ぐ数字。2017年~2023年まで7年連続で利益率は10%を超えている。安定性ではTISをも上回る。
  • 売上高の規模から見ると、従業員数はかなり多いように感じる。

事業内容

7つの重要セグメント

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  • SCSKのセグメントは全部で6つ。売上高数千億のSIerとしては、かなり典型的なセグメント構成。
  • メインは、大体一般企業なんでもを顧客に持つ産業システム部門と、金融機関が顧客の金融システム部門。
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  • 詳しく知らなくても良いという方は読み飛ばして下さい。ただSIerの組織構成という点では勉強になります。
  • グローバルなら③、特定の製品に特化したいなら④。企業のバックオフィスの業務委託を請け負う⑤、システム導入後の運用作業を行う⑥は、一般的に大手SIのプロパが関わるイメージはない。基盤領域に特化したいなら⑦。

システム開発の上流工程とマネジメント

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  • システム開発の上流から保守運用までを一貫して担う。
  • SCSK本体の社員は、特に要件定義や設計等の上流工程を中心に従事すると考えられる。
  • 要件定義や設計だけでなく、開発以降のフェーズに携わる場合も、作業者のマネジメントを行うポジションが中心と想定される。

強み

前提

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  • 前提として、SCSKの強みを見つけるのは難しい。大手SIの中でもとりわけ特徴がない。社外取締役の久保氏も以下のように述べている。

    “当社グループの今後の成長の鍵を握るポイントは2 つあります。1つは「特色のある会社」になることです。”

    “ただ漫然と規模の拡大を図っていくのではなく、「この分野はSCSKが強い」評価される企業になるべきです。”

  • 一方で当チャンネルの役割は、SCSKだけに当てはまる強みを見つけ出して提供することであり、日本一詳しくSCSK固有の強みを紹介することを保証したい。ただ、他の紹介動画より多少ニッチな内容になる点は、あらかじめ断っておきたい。

自動車業界向け車載システム領域

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  • 自動車制御システムの開発ツール“QINeS-BSW”は、SCSKの強みだ。
  • 自動車制御システムは、業界全体でシステムの大枠を共通化させている。どの会社も似たようなシステムを作るのに、バラバラに作るのは非効率だからだ。その共通化した枠組みが“AUTOSAR”である。
  • QINeS-BSW”は、その“AUTOSAR”に準拠したシステム開発を行うためのツールである。
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  • この“AUTOSAR”に準拠したシステム開発を行うためのツールを、国内で初めて市場に投入したのはSCSKである。
  • 公開情報で存在する範囲だと、競合となるのは、後発の「デンソー+NEC連合(*1)」ぐらい。3番手として存在していた「名古屋大学+富士ソフト連合(*2)」は、シェアを獲得できず解散した。
  • さらに、SCSKもこの領域に注力することを明言している。「QINeS」を中心とした、「モビリティサービス」で売上高1000億円を目指すこと名言。また同時に海外展開も視野にいれている。実際に、ベトナムのIT大手「FPT software」とこの領域での業務提携を開始している。
  • つまり日本で、自動車制御システムの開発ツールに関わりたい場合は、SCSKが第一候補と言える。なぜ自動車会社でなく、SCSKなのかという質問には答えを用意しておく必要はある。
  • (*1)株式会社オーバス
    (*2)APTJ株式会社
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  • 補足情報
    ちなみに、海外企業の方が優勢で、ドイツのVector InformatikやElektrobitが主要なサプライヤ。AUTOSAR規格を主導したのがヨーロッパだったために、日本は少し出遅れた。SCSKは数少ない国産のサプライヤである。
  • SCSKは、前身のCSK時代の1980年代から車載システムの開発に携わっており、車載系には強いと想定される。他にも気になる製品がないか調べてみると良いだろう。

金融業界向け不正取引対策システム

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  • マネーロンダリング対策システムとは、顧客が反社会的勢力や経済制裁者に該当していないかのチェック、取引情報からマネーロンダリングのリスクの点数化、実際の不正検知等を行うシステムだ。
  • このシステムにおいて、SCSKの“BankSavior”は、日本TOPのシェアを誇っている。
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  • 日本TOPシェアの根拠は、左記の通り。#ソースは下の参考資料に記載しています。
  • メガバンクは、長年海外ベンダ製品をスクラッチ開発して、マネーロンダリング対策を実施済み。(高コスト)
  • コストの面で対策が遅れていた地銀に対しては、SCSKが売り込みをかけた結果、約半数が利用するTOP製品となった。特に、日本の金融機関のマネロン対策が弱いことを国際社会から指摘された2013年以降、さらに導入ユーザーが拡大している。
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  • 導入先は、公開されているだけでも左記の通り。強いて言えば、競合として考えられそうなのは、NTTデータルウィーブ社の“Oculus”ぐらい。それ以外の企業も、確かにマネロン対策システムの紹介ページは存在する。しかし、公開されている導入実績において、BankSaviorを上回る企業は見当たらない。
  • “マネロンをはじめとする不正取引対策×IT”という軸で考えると、SCSKに志望動機を絞ることができる。
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  • ちなみに、SCSKのマネロン対策システムは、将来的にSCSKの中核となることが期待できる領域でもある。理由は、市場の拡大とSCSKの経営方針にある。
  • 第一に市場は拡大している。マネロン対策ソフトの市場規模は、2021年の16億3000万米ドルから2030年には57.7億米ドルに増加すると予測されている。年平均で15.1%の増加率である。
  • 第二にSCSKの本気度である。マネロン対策領域は、SCSKの中期経営計画で名指しで中核領域に指定されている。2023年には、マネロン対策サービス専業の子会社を設立。加えて同年、金融庁が定める「マネー・ローンダリング等対策高度化推進事業」に係る補助事業者として、大手SIerで唯一選定された。
  • おまけとして追記すると、AML(アンチマネーロンダリング)関連のイベントとしては、日本最大級のカンファレンスである、「AML Conference」にも大手SIerとして唯一参加している。#あずさ監査法人/KPMGなどの監査法人も参加している。

ローコード+標準化+自動化のビジョン

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  • SCSKは、今後の開発をできるだけできるだけ標準化し、スピードと高付加価値を持ったものにしようとしている。経営の基本戦略としての存在感は、大手SIerの中期経営計画の中では一番強いように見える。

    #志望動機でこの話をする場合は、大手SI15社の中期経営計画の内容の統計を取ってデータとして整理することを推奨する。

  • 具体的な話をすると、SCSKはこのビジョンを実現するためのプラットフォームとして“S-Cred+”を作った。その実態は、日立のLUMADAに似ていて、今ある自社製品と一部他社製品を集めて、ローコード/ノーコードや標準化を行ったシステム開発が可能なパッケージとして名前を付けたようなイメージ。開発をこれに当てはめていくつもりだろう。ローコードや標準化によってスピードのある開発をしたい人は、志望動機となりうる。
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  • 補足すると、SCSK以外の会社でもローコードやノーコード/標準化の動きはある。ローコード/ノーコードの開発ツールのシェアは、外資の“GeneXus/OutSystems/Microsoft”、国内大手の“日立/キャノン/サイボウズ”が強いし、NTTデータの中期経営計画の軸の1つは“アセットベースのビジネスモデル”である。
  • よって、SCSKの志望動機を、「ローコード+標準化+自動化」を主軸に作る場合は、他の要素との組み合わせでSCSKに絞るという工夫が必要だ。
  • 例えば、「ソフトウェア企業のサイボウズよりは技術や顧客の幅が広い、NTTデータよりは規模の小さい案件が多くサイクルが早く開発できる、他社には”S-Cred+”のようにプラットフォームはない」というようにである。

弱み

圧倒的劣位の待遇

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  • SCSKの給与は、大手SIer業界の中では最下位を争う水準である。この水準であれば、優秀な新卒が他社を選択したり、入社したとしても流出する可能性が高い。
  • SCSKは労働時間の改善に定評があるため、残業代の差ではないかと考える人もいるだろう。しかしそれは違う。経営陣は、残業削減取組みの過程で “浮いた金額は、特別ボーナスとして全額返金する”という方針を明確にしているからだ。つまり、そもそも給与に充てる予算が少ないのだ。
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  • さらに問題なのは、SCSKは決して儲かっていない企業ではない、という点だ。SCSKの利益率は、常に10%台を超えており、大手SIerの中ではかなり優秀な部類である。ほとんどの大手は最後の10%の年すら思い出せず、辿り着いたとしてもそれを維持することは難しい。
  • つまり、SCSKも利益率が他社水準まで下がることを許容すれば、給与を上げることは十分可能なのである。ただ、それをしない経営戦略なのである。

競合他社との差別化

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  • 強みの章でも述べたが、SCSKはこの会社にしかない強みを見つけるのが難しい会社である。上位4社のような公共金融での大規模開発能力はなく、アクセンチュア、大塚商会、NRI、TISのような圧倒的な得意領域を持っているわけでもない。比較的強みを見つけづらい、CTCも基盤領域、BIPROGYもこの規模ながら金融の勘定系ができる、という強みがある。
  • 確かに強みで述べたような、ニッチな領域で強みがないわけでないが、どれも海外のベンダと戦わなければならずどこまで持続できるかは不透明だ。

年収(弱みで解説したため割愛)

労働環境

労働環境指標

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  • 労働環境指標は業界TOPの素晴らしい数字が並ぶ。
  • 男性の平均勤続年数では2位、育休取得率も3位である。
  • 年休取得率もNTTデータの91.9%と並ぶ2強。3位のBIPROGYで80前半、4位の富士通で70前半である。
出典:
女性の活躍推進企業データベースオープンデータ(2023年10月17日時点)(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/opendata/
参考資料
https://www.shigotoba.net/scsk_1707_2_tsukizangyojikann18jikan.html
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/opendata/

採用情報

200名以上の新卒と拡大中の中途

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  • 2018年以降、新卒採用は200名以上を維持。2020年には312名とピークを迎えた。しかし、ここ最近は新卒採用を抑え、中途採用を急拡大させている。実際に中途の求人情報もかなり見る。新卒中途を合計した採用人数は過去最大であり、規模の拡大傾向は間違いない。
  • 業界内での順位と給与面を鑑みると、就活TOP層との競合は少ないように思える。挑戦する価値はあるだろう。