本記事の内容
本記事では、富士通の同業他社と比較した強み、弱みを独自の視点で解説します。当サイトは、この分析を基に、選考を受けた全てのSIerで選考を通過しました。
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SIer業界第3位の売上高。
顧客のシステムを開発することが主な事業。
主要な競合は、NTTデータ、NEC、日立製作所、日本IBM、アクセンチュア等と予想される。
それ以外の企業と比較すると大規模システムを担当可能な点で、レベルは一段上である。主要な競合になることは少ないだろう。
自社でハードウェアを開発可能な「メーカ系」のSIerである。
メインフレームに代表されるサーバ機器だけでなく、NW機器やノートPC、スマホ、半導体まで自社で作ることが可能。
ハードウェアの開発ができる日本のSIerは、富士通を含めて4社しかいない。この時点で他社との差別化は容易。
#富士通、日立、NEC、日本IBM
SI部門の売上高はここ10年横ばい。SI事業以外も含めた売上高は4兆3817億円から3兆7137億円に減少している。会社としてのピークは5兆4000億円であり、企業規模は縮小傾向にある。
利益率はSI事業で6.1%から8.2%。SI事業以外を含めると、2.0%から9.0%に改善している。利益率の低い事業から撤退し、利益率の高いSI事業の割合が増加したことが主な原因だろう。社としては大きく収益性を改善させた。SIer業界全体で見ると標準レベルの数字。#テクノロジーソリューション部門をSI事業とみなしている。
従業員数は、SI事業単体で19468人から34977人に増加している。
このことからも、富士通がSI事業/ITコンサル事業にリソースを集中させる方針であると分かる。
システム開発の上流から保守運用までを一貫して担う。
富士通の社員は、特に要件定義や設計等の上流工程を中心に従事すると考えられる。要件定義や設計だけでなく、開発以降のフェーズに携わる場合も、作業者のマネジメントを行うポジションが中心と想定される。
他にも事業や職種は様々あるが、今回はボリューム層と考える内容を中心に紹介した。
国内ITサービス市場の全領域で圧倒的なシェアを誇る。金融以外の全ての市場で1位である。
富士通でしか携わることのできないシステムが多数あるため、富士通にしかない強みを見つけることは簡単。ここでは特にシェアが高い業界を厳選して解説していく。
※留意事項
・ソースは2018年に富士通社が公開した資料
・国内市場に限定した数字
はじめに代表格である官公庁とヘルスケアを紹介する。
※留意事項
・ソースは2018年に富士通社が公開した資料
・国内市場に限定した数字
官公庁は、富士通が無類の強さを誇る領域である。
官公庁の予算額上位のシステムを数多く担当し、厚労省ハローワークシステムと法務省登記情報システムだけで年間850億円もの売上を達成している。
予算額上位6システムのうち、富士通が担当するシステムは基本的に独占的に落札しているように見える。大手SIの中でも大規模システムを主導できる企業と考えて良いだろう。
*中央省庁公開資料より、数字は2018年のもの。
*ベンダは政府公共調達データベース、中央省庁公開資料より判断。
国内ヘルスケア領域も最大手は富士通と言って問題ないだろう。
ヘルスケアの代表格である電子カルテは国内TOPシェア、研究の最前線で使用する治験関連システムでも国内で圧倒的なシェアを誇っている。2000年代には既にヘルスケア領域における高いシェアを確認できており、日本中の医療機関、研究機関、医療機器代理店とのリレーションは日本一であると推定可能。
具体的に言うと、富士通の電子カルテのシェアは32%。特に病床の多い大学病院のシェアは48%。富士通の治験業務支援システムのシェアは85%。安全性情報管理システムのシェアは60%に及ぶ。
10%近くのシェアを獲得する一般企業向けシステムや金融系システムは、メインフレームを使用する国内大手企業が中心であると思われる。現在は、メインフレームを使用していない場合でも、過去にメインフレームを使用していた企業は、引き続き富士通と取引している可能性が高い。
通信ではNTTグループとの関係が強い。2012年の富士通の最大顧客である「NTTグループ」だけで年間5239億円を売り上げた。これはこの年の富士通の売上高の12%である。これは同業のCTCの1社の売上高よりも大きい。通信機器等のハードを作れることが影響しているだろう。
簡単に言うと、計算が早いコンピュータには2種類ある。それが「スーパーコンピュータ」と「量子コンピュータ」である。高度な計算を圧倒的な速度で実施することが可能なことから、これまでにない研究やシュミレーションが可能になる。AIの普及により、世界中で膨大な計算が求められる今、半導体とともに世界で最も熱い技術領域と言える。
富士通はこれらの開発において国内No.1であり、世界でも十分に戦うことが可能なレベルにある。スーパーコンピュータでは「京」や「富岳」が世界TOPのスコアを持つ。また、量子コンピュータも日本で初めて公開した。SIerとして競合となる会社では、このようなレベルのコンピューティング技術をもった企業は少ない。
スーパーコンピュータに関しては、日立製作所とNECも取り組んではいるももの、そのピーク性能には10倍以上の差がある。
量子コンピュータにおいては、国内で先駆けて開発を行った。国産2号機や3号機も既にリリースしている。富士通が国産機をリリースするまで、国内にある量子コンピュータは米国IBM社の1台だけであり、富士通がリードしていることが分かる。ただ、量子コンピュータに関しては、日立とNECも開発を続けており、富士通が圧倒的という印象はない。
これらのコンピューティング技術を持ち、膨大な計算が可能な富士通は、その先にある現場でのアプリケーションにおいてもより高度な分析が可能だ。その点で、優位性を持つことができるだろう。
また、富士通の量子コンピュータは、米中企業のものとは異なるプロセッサを使用し、より汎用的に様々なアプリケーションを載せられるようにしている。自慢の計算能力を様々な領域で活かせるのだ。この最先端技術こそが他のSIerにはない富士通の強みだ。
①各領域で国内No.1のシェアを持つため、No.1の企業でそのシステムを担当したいと述べれば良い。
(Ex.公共の大規模システム、ヘルスケアの電子カルテ)
②「携わりたいシステムをさらに拡張し、データ分析を活用した提案型のシステムとするために、他社にない最先端のコンピューティング技術を持った企業が良い」と言えれば、そんな企業は富士通以外にないと面接官も納得してくれるはずだ。
ITインフラ領域での敗北により、富士通固有の強みを失っていることが「弱み」である。
従来の富士通は、ハードウェアに圧倒的な強みがあった。これまでのシステム開発は、顧客ごとにサーバを調達して、顧客ごとにソフトウェアを作って、顧客の拠点に納品する形態が主流であった。よって、顧客に合わせてサーバからソフトまでを、高い性能で、1社で開発しきれる富士通は日本で1番のSIerになることができた。
しかし、変化の早い現代ではこの作り方では開発スピードが遅く、ビジネスの変化についていけない。そのため現在はクラウドが市場を席巻している。
クラウド化により、SIerの仕事の仕方は変化した。クラウドベンダのデータセンタにあらかじめ用意されたサーバを従量課金制で使用し、ソフトウェアは極力他の企業と共通化されたSaaSサービスを利用することが増えた。
このシステム開発の変化により、富士通は、「システムをハードウェアから作れること」という強みを喪失した。1から作ることを顧客は求めていないのだ。より汎用性があり、共通化されたサーバを素早く用意できることがITインフラには求められてる。これをクラウドという形態でAWSやAzureが提供し、IBMや富士通はその変化に対応できなかった。
結果として、富士通はハードから事実上撤退し、他のSIerとの違いを失った。
他のSIerは、ハードウェアを作れない分、ソフトウェア開発で違いを生み出してきた企業であり、富士通に大きなアドバンテージがあるようには見えない。今後はそれらの企業と対等に戦っていく必要がある。また、ハードウェアで差が付かない今、「そもそもどのようなシステムを作るか」というITコンサルの領域が顧客から強く求められている。しかし、この領域でも富士通は強くない。コンサルを専門とする子会社の立ち上げも遅く、当然人材も少ない。
以上が富士通の弱みである。
念のため断っておきたいが、世界市場の占有率とハード事業の利益率を考えると、ハード(汎用機)からの撤退、縮小自体はいつかは決断するべきことであったように思う。 撤退自体は問題ではなく、今後シフトするソフトウェアとコンサル領域において優位性を維持できるか不透明であることが問題なのだ。
メインフレームから撤退し、ソフトウェアとコンサルに集中する方針を示した時、会社の新たな中核事業戦略として「Fujitsu Uvance」を策定した。
この「Fujitsu Uvance」が不透明であることが、富士通の弱みと考えている。
「Fujitsu Uvance」の内容を説明する。「Fujitsu Uvance」とは「これまで業界別顧客別に個別に作っていたシステムを、データを一元化して活用し、業界横断で分析することで、これまでにない解決策やビジネスを生み出す」というものである。イメージは左記の通り。
また収益性も人月型から利用型へ移行することを明確にしている。
これが不透明と考える理由はいくつかある。
第一に「Fujitsu Uvance」の内容は、最近生まれたものでも、富士通だけが思いついた内容でも、他の会社で不可能なものでもない。NTTデータのMaaSを中心とした事例や日立のIoTプラットフォームも同様の考え方に基づいたシステムである。人月型から利用型への移行については、もはや主張していないSIerはいない。
第二に外部から評価することが難しい。日立の「LUMADA」もそうだが、戦略の概念自体が曖昧であるため、戦略に当てはまるか微妙なシステムであっても実績にカウントできてしまうように見える。2022年の売上2000億円を、2025年に7000億円にすると言うが、今後実績として語る内容の中身については注視する必要がある。
これらの懸念から「Fujitsu Uvance」は不透明感があると判断し、他のSIや外資と比較して戦略の出足も遅いことから「弱み」として取り上げた。
念のため言及しておくが、業界横断の前提となる各事業会社向けのシステム開発経験では、富士通が圧倒的な実績を持つ。しかし、戦略の遅さと曖昧さ、コンサルの弱み、グローバルの停滞を考慮すると、今後も厳しい勝負が続くことは間違いない。
大手SIer業界の中では平均的な水準。近年の施策の1つとして、給与を増額させ続けている点が非常に良い。これでいて会社の利益率も向上させているため文句なしの結果。組織再編にあたり3000人規模のリストラを行い、リソースの再配分を行ったことも影響しているだろう。
SIer業界を志望する人が、給与が原因で志望を断念する可能性は低い。
労働環境指標は全てにおいてTOPクラスの指標。全ての順位が上位4位以内にランクインしている。
特に男性の育休取得率はNSSOLと並び圧倒的に優秀な数字。100%を目指す方針も明らかにしている。
リモート率も8割であり、労働環境の指標は非常に高い。
SIerに限らず、日本全体で見ても新卒の採用数は極めて多い。700名~800名程度の採用が長期間継続されている。
特筆すべきは、中途採用の増加である。2022年までは300名~400名であったが、2023年は800名に増加した。そして2024年は2000名を予定している。そのうち1000名は拡充を始めたコンサルティング領域を予定していることから、今後もこの規模での採用が続くかどうかは不明だが、間違いなく今年はチャンスだ。