本記事の内容

本記事では、野村総合研究所の同業他社と比較した強み、弱みを独自の視点で解説します。当サイトは、この分析を基に、選考を受けた全てのSIerで選考を通過しました。

本記事の視聴対象者は以下の方です。

  • 野村総合研究所に興味がある方。
  • 野村総合研究所の選考を受ける方。
  • 野村総合研究所の詳細な企業分析を行いたい方。
  • 他のSIerと差別化ができず困っている方。
  • SIer業界に興味がある方。

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野村総合研究所とは

国内屈指のコンサル・SIer

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  • コンサル部門とIT部門で構成される。どちらも国内屈指の規模を誇る。
  • コンサル部門は、顧客の事業戦略策定、戦略を実現するため業務プロセス等のコンサルティングを行う。
  • IT部門は、顧客が利用するシステムの開発を行う。
  • 国内SIer売上高ランキングはこちら

野村Gと一定の関係を持つ

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  • 源流は野村証券のシステム部署。1960年代に別会社に分離した。
  • 野村Gによる持ち株比率は年々減少し、今では決定権を持つ50%を下回っている。役員が伊藤忠商事から天下るCTCとは異なり、野村総研は大半が自社出身。
  • 一方で、野村Gの各企業との結びつきは依然として強く、主要顧客である。
参考資料
https://www.ullet.com

売上高6921億円/利益率16.2%/従業員数6782人

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  • 売上規模、利益率ともに国内屈指の大手SIer。特に利益率は、SIer業界で断トツの一位。
  • 売上高を伸ばしながら、ただでさえ高い利益率を改善している点は、圧巻の一言。
  • SIer業界でNo.1の優良企業と自信を持って言える。
  • 高い利益率の秘密は「4.強み」で徹底解説している。

事業内容

4つの中核領域

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  • コンサルとSIerが合体した企業。
  • コンサル部門は、顧客の事業戦略や事業戦略達成のための業務改善をアドバイスして報酬を得る。
  • SIの3部門は、金融と法人の顧客が利用するシステムを開発して、開発費用や利用料、保守費用を得る。

シンクタンク・戦略コンサル・業務コンサル

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  • シンクタンクは、政策立案、政策評価、社会実験、研究等を実施する。一般的に非常にポストの少ないポジションで、文系の研究職のようなイメージ。
  • 戦略コンサルは、各企業の経営層に対して、企業の経営戦略を提供する。経営の根幹であり、サラリーマンの中でも最高の頭脳が集結する職種。(MBB等)
  • 業務コンサルは、経営戦略を実現するために業務プロセス・組織・制度改革を支援する。(デロイト、Pwc等)

システム開発の上流工程とマネジメント

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  • システム開発の上流から保守運用までを一貫して担う。
  • NRI本体の社員は、特に要件定義や設計等の上流工程を中心に従事すると考えられる。
  • 要件定義や設計だけでなく、開発以降のフェーズに携わる場合も、作業者のマネジメントを行うポジションが中心と想定される。

強み

コンサル×SIer

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  • コンサル部門とIT部門を両立するSIerは少ない。NRIよりも売上高のあるSIerで、NRIと同等程度のコンサルティング機能を持つ企業はアクセンチュアのみであり、この点で差別化は可能。(アクセンチュアにプラスして、一応IBMとの差別化理由は検討すべき。)
  • 戦略、業務コンサルとSI機能が共同で顧客を支援することが可能。企業がNRIと協業する際の発言を見ると、コンサル×SIに期待している様子が見て取れる。

証券・投信業界を独占するシステム

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  • 証券系システムでは圧倒的なシェアを誇り、東証出来高の50%がNRIのシステムで管理されている。また、国内証券口座数ベースで約5割のシェアを持つ。業界標準装備となっている。
  • 投資信託も各システムでシェア8割と敵なし状態である。

圧倒的な利益率を実現する経営戦略

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  • 前提としてNRIの利益率は、他のSIerを圧倒していることを抑えて欲しい。15%を超える利益率を安定して残し、常にSIer業界の利益率No.1を守り続けている。
  • 必然的に給与は高くなる。
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  • NRIがSIerとして圧倒的な利益率を誇る秘密は金融ITソリューションにある。
  • コンサルティングは業界としてそもそも利益率が高いので、ここでは解説しない。
  • 産業ITは、SIerとしては普通の利益率(海外が足を引っ張っており、国内だけだと13%ある。)。IT基盤サービスは、データセンタや運用等のサービスであり、業界全体で利益率は高い傾向にあるので、ここも割愛する。
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  • 圧倒的な利益率を生む戦略の1つが、共同利用型システムである。作るシステムが1つでも、複数の顧客に販売することができる。開発費用比の売上高は必然的に高くなり、利益は高くなる。
  • 前述の通り、NRIは証券・投信業界の企業に業界標準の同一システムを展開している。また、金融以外でも恣意的にそのようなシステム開発を選択して事業の中心としている(マイナンバー関連等)
  • 共通システムを作ることが難しい産業ITの利益率が、他のSIerと比較して圧倒的な数字ではないことからも、NRIの圧倒的な利益率には、金融ITの共同利用型システムが大きく貢献していると分かる
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  • 高利益率を生む戦略の2つ目は、得意領域に集中して取り組むことである。例えば、得意分野である証券システム開発は、長年のノウハウが蓄積し、効率化が可能なはずである。事実、経営層の発言からもその様子が伺える。
  • もちろんチャレンジングな領域にも挑戦しているが、慎重な姿勢は崩していないように見える。システムのふれ幅が広くなる産業ITは、ノウハウが蓄積しづらいと予想でき、金融ITと比較して利益率が低くなっていると思われる。

厚い顧客基盤

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  • 野村グループ/セブングループ
    教科書的な主要顧客は、野村GとセブンG。NRIは、もともと野村証券のシステム部だったこともあり、当然関係は深い。セブンGは、セブンイレブンが日本に上陸した時からずっとサポートしている。全面的にNRIがシステムを委託されている。”nanaco”もNRIが担当している。
  • 日本生命保険
    日本生命保険とは資本業務提携を結んでいる。野村総研の第8位の株主。
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  • 味の素
    両者ITサービスの戦略的業務提携を結んでいる。2012年、「味の素」の情報子会社であった「味の素システムズ」の株式を51%保有して、「NRIシステムテクノ」とした。
  • 日本航空
    2018年共同出資会社である「JALデジタルエクスペリエンス」を設立。出資比率は、JAL51%、NRIグループ49%。2016年「どこかにマイル」、2019年スマートフォンアプリ「JAL Lounge+」等を共同開発。近年確実に提携を強めつつある。
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  • 資生堂
    2012年「Watashe+(ワタシプラス)」、2018年スキンケアシステム「Optane(オプチューン)」、2020年「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」を協業。
  • その他
    その他にも丸紅、サッポロHD、KDDI等、各領域で大口の顧客を抑えている。
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  • 2大顧客依存からの脱却は問題なく進んでいる。2010年には、野村ホールディングの仕事が売上高の28.5%、セブン&アイホールディングは11.2%だったが、2019年には野村向けが12.3%、セブン向けが9.9%にまで減少している。
  • 先ほど解説した企業のように、従来の2大顧客以外にも、ビッククライアントを作りつつあることが分かる。売上高10億円以上の顧客は、2018年86社から、2022年には107社まで拡大した。

弱み

顧客の幅が狭い

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技術の幅が狭い

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  • 安定した高い利益率を生み続ける経営とトレードオフで、最先端技術、新規事業等のチャレンジングな領域への挑戦は比較的少なくなると考える。
  • また、会社の規模感を考えても、自社製ハードや自社製ソフトを開発する、メーカ系の日立、富士通、NEC、日本IBM、その他のソフトウェアベンダと比較して、技術幅が狭くなるのは必然。

微妙なグローバル化

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  • M&Aによる規模の拡大は進んでいる。オーストラリアと北米を中心に、中期経営計画で目標としていた、売上高1000億円は達成した。
  • しかし、利益率は2.7%と大きく足を引っ張っている。M&Aを行い子会社化しても、中身は同じ企業とは言えない状態。
  • 2022年3月期の決算では、海外での営業利益率の目標について、「今後1年かけて精査していく」と述べたが、2023年決算では国別の目標数値は提示されなかった。
  • 補足すると、2021年の海外利益率は9.8%と高かった。しかし、2021年以前は公開しておらず、2023年も2.7%と、安定して高い利益率を確保できる状態ではないと読み解ける。
  • 今後グローバル化が成功するかは、2017年から進出が本格化した豪州の利益率がどこまで改善するかにかかってくる。
  • 2021年から本格化した北米については、まずは一定の規模拡大。その後、どこまで国内の利益率に近づけるかに注目したい。

年収

業界No.1/日本国内最高峰の年収

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  • SIer業界では断トツの1位。業界内にとどまらず、国内の企業全てと比較した場合でも、最高峰の給与であることは間違いない。希望の仕事がマッチする場合、NRIは最高の企業である。
  • 一方で、他のSIerも人材獲得のために給与を引き上げており、少しずつではあるものの背中は近付いてきている。とはいえ、当面トップの座は変わらないだろう。

労働環境

労働環境指標

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  • 平均勤続年数は、男性が10位、女性が9位と低い。男女ともに低い。
  • 男性の育休取得率は76%は5位で、かなり良い方。
  • 有給の取得率は8位で、可もなく不可もなくといった数字。
  • *大手SIer売上上位13社内の順位。

出典:
女性の活躍推進企業データベースオープンデータ(2023年10月17日時点)(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/opendata/

採用情報

高年収かつ大量採用の理想的企業

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  • 安定して300人以上を採用している。これだけの平均年収の企業の中では採用人数はかなり多い。
  • 直近2年は400名近くまで採用を拡大している。各種決算資料から、採用拡大の傾向は続くとみて間違いないと思う。
  • 採用難易度という面で見ると、人数の多いIT部門が一番狙い目と思われる。